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さんごくし
三国志(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《三国志(一)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 頁
「――道理で、貴様の面がまえは、凡者でないはずだ。県軍のまわし者でなければ、洛陽の直属の隠密か。いずれにしても、官人だろうてめえは。――さ、泥を吐け。いわねば、痛い思いをするだけだぞ」
しまいには、馬と李と、二人がかりで、劉を蹴って罵った。
劉は一口も物をいわなかった。こうなったからには、天命にまかせようと観念しているふうだった。
「こりゃひと筋縄では口をあかんぞ」
李は、持てあまし気味に、馬へ向ってこう提議した。
「いずれ明日の早暁、俺はここを出発して、張角良師の総督府へ参り、例の茶壺を献上かたがた良師のご機嫌伺いに出るつもりだが、その折、こいつも引っ立てて行って、大方軍本部の軍法会議にさし廻してみたらどうだろう。思いがけない拾いものになるかもしれぬぜ」
よかろうと、馬も同意だ。
斎堂の扉は、かたく閉められてしまった。夜が更けると、ただ一つの高い窓から、今夜も銀河の秋天が冴えて見える。けれどとうてい、そこからのがれ出る工夫はない。
どこかで、馬のいななきがする。官の県軍が攻めてきたのならよいが――と劉備は、望みをつないだが、それは物見から帰ってきた二、三の賊兵らしく、後は寂として、物音もなかった。