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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(一)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 頁

青空文庫

そう見えた。

彼もまた、そう覚悟した。

ところへ、一方の血路を斬りひらいて、彼の臣、夏侯淵は主を求めて馳けつけてきた。

そしてここの態を見るや否や、「主君を討たすな」と、一角から入りみだれて猛兵を突っこみ、李を追って、ようやく、曹操を救けだした。

「ぜひもありません。かくなる上は、お命こそ大事です。ひとまず麓の陽まで引退がった上となさい」

夏侯淵は、わずか二千の残兵を擁して踏みとどまり、曹操に五百騎ほど守護の兵をつけて、

「早く、早く」と促した。

顧みれば、一万の兵は、打ちひしがれて、三千を出なかった。

曹操は、麓へ走った。

しかし、道々幾たびも、伏兵また伏兵の奇襲に脅やかされた。従う兵もさんざんに打ち減らされ、彼のまわりにはもう十騎余りの兵しか見えなかった。

それも、馬は傷つき、身は深傷を負い、共に歩けぬ者さえ加えてである。

みじめなる落武者の境遇を、曹操は死線のうちに味わっていた。

人心地もなく、迷いあるいて、ただ麓へ麓へと、うつろに道を捜していたが、気がつくと、いつか陽も暮れて、寒鴉の群れ啼く疎林のあたりに、宵月の気はいが仄かにさしかけている。