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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(一)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 頁

青空文庫

「……?」

孫堅の眼は、なにか、非常な驚きに輝きだしていた。紫金襴の嚢には、金糸銀糸で瑞鳳彩雲の刺繍がしてあった。打紐を解いてみると、中から朱い匣があらわれた。その朱さといったらない。おそらく珊瑚朱か堆朱の類であろう。

可愛らしい黄金の錠がついている。鍵は見当らない。孫堅は、歯で咬んでそれをねじ切った。

中から出てきたのは、一顆の印章であった。とろけるような名石で方円四寸ばかり、石の上部には五龍を彫り、下部の角のすこし欠けた箇所には、黄金の繕いがほどこしてある。

「おい、程普を呼んで来い。――大急ぎで、ひそかに」

孫堅は、あわてて云った。

そしてなおも、

「はてな? ……これは尋常の印顆ではないが」

と、掌中の名石を、恍惚として凝視していた。

程普が来た。

息をきって、使いの者と共に、ここへ近づいて来るなり、

「なんぞ御用ですか」と、訊ねた。

孫堅は、印顆を示して、

「程普。これをなんだと思う?」と、鑑識させた。

程普は、学識のある者だった。手に取って、一見するなり驚倒せんばかり驚いた。

「太守。あなたはこれを一体、どうなされたのですか」

「いや、いまここを通りかかると井戸のうちから怪しい光を放つので、調べさせてみたところ、この美人の死体が揚ってきた。