輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
さんごくし
三国志(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《三国志(一)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 頁
老僧は、あわただしく古塔の扉をひらいて中へ隠れた。そしてあんなに急いだのに、なかなか出てこなかった。
「どうしたのだろう?」
劉備は気を揉んでいる。そして賊兵が追ってきはしまいかと、あちこち見まわしているとやがて、
「青年、青年」
小声で呼びながら、塔の中から老僧は何かひきながら出てきた。
「おや?」
劉備は眼をみはった。老僧が引っぱっているのは駒の手綱だった。銀毛のように美しい白馬がひかれだしたのである。
いや、いや、白馬の毛並の見事さや、背の鞍の華麗などはまだいうも愚かであった。その駒に続いて、後ろから歩みも嫋かに、世間の風にも怖れるもののように、楚々と姿をあらわした美人がある。眉の麗しさ、耳の白さ、また、眼にふくむ愁いの悩ましいばかりなど、思いがけぬ場合ではあり、星夜の光に見るせいか、この世の人とも思えぬのであった。
「青年。わしがお前を助けて上げたことを、恩としてくれるなら、逃げるついでに、このお嬢さまを連れて、ここから十里ほど北へ向った所の河べりに陣している県軍の隊まで、届けて上げてくれぬか。わずか十里じゃ、この白馬に鞭打てば――」
老僧のことばに、劉備は、否やもなく、はいと答えるべきであるが、その任務よりも、届ける人のあまりに美し過ぎるので、なんとなくためらわれた。