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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(一)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 頁

青空文庫

このお子たちの母たる呉夫人も、呉姫も、兪美人も、どうか思い止まって下さるようと、私を通じてのおすがりです」

「ばかをいえ、この期になって――」

「でも、敗れて後、戟をおさめるよりはましでしょう」

「不吉なことを申すな」

「すみません、しかし兄上、これが、天下の乱にのぞんで億民の救生に起つという戦なら、私はお止めいたしません。たとえ三夫人の七人のお子がいかにお嘆きになろうとも、孫静が先に立ってご出陣を慶します。――けれどこんどの軍は、私怨です。自我の小慾と小義です。その為、兵を傷つけ、百姓を苦しめるようなお催しは、絶対にお見合せになったほうがよいと考えられますが」

「だまれ、おまえや女子供の知ったことじゃない」

「いや、そう仰っしゃっても」

「黙らぬかっ。――汝は今、名分のない戦といったが、誰か、孫堅の大腹中を知らんや。おれにも、救世治民の大望はある。見よ、今に天下を縦横して、孫家の名を重からしめてみせるから」

「ああ」

孫静は、ついに黙ってしまった。

すると、呉夫人の子の長男孫策は、ことし紅顔十七歳の美少年だったが、つかつかと前へ進んで、

「お父上が出陣なさるなら、ぜひ私も連れて行ってください。