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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(一)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 頁

青空文庫

馬蹄をしのばせて、蕭殺たる疎林の中を、忍びやかに進んで行った。万樹すべて葉をふるい落し、はや冬めいた梢は白骨を植え並べたように白かった。

細い月が懸かっていた。――と敵の哨兵であろう、疎林の端まで来ると、

「誰だ」と、大喝した。

どっと、先頭の十騎ばかりが、跳びかかって、たちまち五人の歩哨を斬りつくした。

すぐ、そこは、孫堅の陣営だったから、孫堅は、直ちに、馳けだして、

「今、馳け通った馬蹄の音は敵か、味方か」と、大声で訊ねた。

答えはなく、五人の歩哨は、二日月の下に、碧い血にまみれていた。

孫堅は、それを見るなり、

「やっ。さては」と、直覚したので、馬にとび乗るが早いか、味方の陣へ、

「城兵が脱出したぞっ。――われにつづけっ」

と、呼ばわって、自身まっ先に呂公の五百余騎を追いかけて行った。

急なので、孫堅の後からすぐ続いた者は、ようやく、三、四十騎しかなかった。

先の呂公は振りかえって、

「来たぞ、追手が」

かねて計っていたことなので、驚きもせず、疎林の陰へ、射手を隠して、自分らは遮二無二、山上へよじ登って行った。そして敵のかかりそうな断崖の上に、岩石を積みかさねて、待ちかまえていた。