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さんごくし
三国志(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《三国志(一)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 頁
「河まで行けば。県軍のいる河まで行けば! ……」
劉備の打ちつづけていた生木の鞭は、皮がはげて白木になっていた。
低い土坡のうねりを躍り越えた。遠くに帯のように流れが見えてきた。しめたと、劉備は勇気をもり返したが、河畔まで来てもそこには何物の影もなかった。宵に屯していたという県軍も、賊の勢力に怖れをなしたか、陣を払って何処かへ去ってしまったらしいのである。
「待てッ」
驢にのった精悍な影は、その時もう五騎六騎と、彼の前後を包囲してきた。いうまでもなく黄巾賊の小方(小頭目)らである。
驢を持たない徒歩の卒どもは、駒の足に続ききれないで、途中であえいでしまったらしいが、李朱氾をはじめとして、騎馬の小方たち七、八騎はたちまち追いついて、
「止れッ」
「射るぞ」と、どなった。
鉄弓の弦をはなれた一矢は、白馬の環囲に突きささった。
喉に矢を立てた白馬は、棹立ちに躍り上がって、一声いななくと、どうと横ざまに仆れた。芙蓉の身も、劉備の体も、共に大地へほうり捨てられていた。
そのまま芙蓉は身動きもしなかったが、劉備は起ち上がって、
「何かっ!」と、さけんだ。彼は今日まで、自分にそんな大きな声量があろうとは知らなかった。