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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(一)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 頁

青空文庫

「ええ」

貂蝉は、目瞬きもせず、彼の吐きだす熱い言々を聞き入っていた。

「――が、董卓を殺そうとして、効を奏した者は、きょうまで一人としてない。かえって皆、彼のために殺し尽されているのだ」

「…………」

「要心ぶかい。十重二十重の警固がゆき届いている。また、あらゆる密偵が網の目のように光っている。しかも、智謀無類の李儒が側にいるし、武勇無双の呂布が守っている」

「…………」

「それを殺さんには……。天下の精兵を以てしても足らない。……貂蝉。ただ、おまえのその腕のみがなし得る」

「……どうして、私に?」

「まず、おまえの身を、呂布に与えると欺いて、わざと、董卓のほうへおまえを贈る」

「…………」

さすがに、貂蝉の顔は、そう聞くと、梨の花みたいに蒼白く冴えた。

「わしの見るところでは、呂布も董卓も、共に色に溺れ酒に耽る荒淫の性だ。――おまえを見て心を動かさないはずはない。呂布の上に董卓あり、董卓の側に呂布のついているうちは、到底、彼らを亡ぼすことは難しい。まずそうして、二人を割き、二人を争わせることが、彼らを滅亡へひき入れる第一の策だが……貂蝉、おまえはその体を犠牲にささげてくれるか」