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さんごくし
三国志(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《三国志(一)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 頁
「まだ帳を下ろしていらっしゃるようですな」と、無感情な顔して云った。
「ほ」
呂布は、何かむらむらと、不安に襲われたが、わざと長閑な陽を仰いで云った。
「もう午の刻にも近いのに、まだお寝みなのか」
「後堂の廊も、あの通り閉したままですから」
静かに、春園の禽は、昼を啼きぬいていた。
――寝殿は帳を垂れたまま寂として、陽の高きも知らぬもののように見える。
呂布はおおい難い顔いろの裡からやや乱れた言葉でまた訊ねた。
「太師には、昨夜、よほどお寝みがおそかったとみえますな」
「ええ、王允の邸へ、饗宴に招かれて、だいぶごきげんでお帰りでしたからね」
「非常な美姫をお伴れになったそうですな」
「や、将軍もそれを、もうご存じですか」
「ムム、王允の家の貂蝉といえば有名な美人だから」
「それですよ、太師のお目ざめが遅いわけは。昨夜、その美人を幸いして、春宵の短きを嘆じていらっしゃることでしょう。……何しても、きょうはよい日和ですな」
「あちらで待っているから、太師がお目ざめになったら知らしてくれ」
呂布は、思わず、憤然と眉に色を出して、そこから立去った。
相府の一閣で、彼はぼんやりと腕ぐみしていた。