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さんごくし
三国志(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《三国志(一)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 頁
「――そんな所で、今朝からなにを待っているんだね。このごろは、黄巾賊とかいう悪徒が立ち廻るからな。役人衆に怪しまれるぞよ」
青年は、振りかえって、
「はい、どうも」
おとなしい会釈をかえした。
けれどなお、腰を上げようとはしなかった。
そして、幾千万年も、こうして流れているのかと思われる黄河の水を、飽かずに眺めていた。
(――どうしてこの河の水は、こんなに黄色いのか?)
汀の水を、仔細に見ると、それは水その物が黄色いのではなく、砥石を粉にくだいたような黄色い沙の微粒が、水に混じっていちめんにおどっているため、濁って見えるのであった。
「ああ……、この土も」
青年は、大地の土を、一つかみ掌に掬った。そして眼を――はるか西北の空へじっと放った。
支那の大地を作ったのも、黄河の水を黄色くしたのも、みなこの沙の微粒である。そしてこの沙は中央亜細亜の沙漠から吹いてきた物である。まだ人類の生活も始まらなかった何万年も前の大昔から――不断に吹き送られて、積り積った大地である。この広い黄土と黄河の流れであった。
「わたしのご先祖も、この河を下って……」
彼は、自分の体に今、脈うっている血液がどこからきたか、その遠い根元までを想像していた。