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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(一)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 頁

青空文庫

曹操をめぐる猛将たちは、羊山の上に立って笑った。

すると、次の日、一隊の豹卒を率いて、陣頭へやって来た巨漢がある。

この漢、馬にも乗らず、七尺以上もある身の丈を持ち、鉄棒をかい込んで双の眼をつりあげ、漆黒の髯を山風に顔から逆しまに吹かせながら、

「やあやあ、俺を誰と思う。この地方に隠れもない、截天夜叉何曼というのはおれのことだ。曹操はどこにいるか。真の曹操ならこれへ出て、われと一戦を交えろ」

と、どなった。

曹操は、おかしくなって、

「誰か、行ってやれ」と、笑いながら下知した。

「よし、拙者が」と、旗本の李典が行こうとすると、いやこのほうに譲れと、曹洪が進み出て、わざと馬を降り、刀を引っ提げて、何曼に近づき、

「真の曹将軍は、貴様ごとき野猪の化け物と勝負はなさらない。覚悟しろ」

斬りつけると、何曼は怒って、大剣をふりかぶって来た。

この漢、なかなか勇猛で、曹洪も危うく見えたが、逃げると見せて、急に膝をつき後ろへ薙ぎつけて見事、胴斬りにしてようやく屠った。

李典は、その間に、駒をとばして、賊の大将黄邵を、馬上で生擒りにした。――もう一名の賊将、何儀のほうは、二、三百の手下をつれて、葛陂の堤を、一目散に逃げて行った。