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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(一)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 頁

青空文庫

と、わなないた。

楊彪の妻は、「奥さま。男って、みんなそうなんですから、決して、ご主人をお怨みなさらないがようございますよ。ただ私は、李夫人が、憎らしゅうございますわ。あなたという者があるのを知っていながら、何ていうお方だろうと思って――」と、すり寄って、抱かないばかりに慰めると、郭夫人は、

「道理でこの頃、良人の容子が変だと思いました。夜もたびたび遅く帰るし、私には、不機嫌ですし……」と、さめざめと泣いた。

楊彪の妻が、帰ってゆくと、彼女は病人のように、室へ籠ってしまった。その夜も、折悪しく、彼女の良人は夜更けてから、微酔をおびて帰って来た。

「どうしたのかね。おい、真っ蒼な顔しておるじゃないか」

「知りません! うっちゃッておいて下さい」

「また、持病か。ははは」

「…………」

夫人は、背を向けて、しくしく泣いてばかりいた。

四、五日すると、李司馬の邸から、招待があった。郭夫人は、良人の出先に立ちふさがって、

「およしなさい。あんな所へ行くのは」と、血相を変えて止めた。

「いいじゃないか。親しい友の酒宴に行くのが、なぜ悪いのか」

「李司馬だって、あなたを心で怨んでいるにちがいありません」