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さんごくし

三国志(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(三)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 312,452 字 · 628 頁

青空文庫

しかし、今さら道を変えて奔ってもどうなろう。後ろも敵軍、前も敵軍。

そう考えたか、扈従の武臣朝官たちは、早くもここを最期と叫んだり、或る者は、逃げる工夫に血眼をさまよわせていた。

ところへ!

彼方から唯二、三騎。それは武者とも見えない扮装の者が、何か懸命に大声をあげながら、こなたへ馳けて来るのが見えた。

「あっ。見たような」

「朝臣らしいぞ」

「そうだ、前に、勅使として、山東へ下った者たちだ」

意外。その人々は、やがて息せきながら駒を飛び降りるや、御車の前へひれ伏して、

「陛下。ただ今帰りました」

と、奏上した。

帝には、なお、怪訝りのとけぬご容子で、

「あれに見ゆる大軍は、そも、何ものの軍勢か」

「さればにて候、――山東の曹将軍には、われらを迎え、詔勅を拝するや、即日、お味方を号令し給い、その第一陣として、夏侯惇、そのほか十余将の御幕下に、五万の兵を授けられ、はやこれまで参ったものでござりまする」

「えっ……ではお味方に馳せ上った山東の兵よな」

御車の周囲にひしめいていた人々は、使者のことばを聞くと、一度に生色を取りもどし躍り上がらんばかりに狂喜した。

そこへ、鏘々たる鎧光をあつめた一隊の駿馬は早、近づいて来た。