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さんごくし

三国志(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(三)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 312,452 字 · 628 頁

青空文庫

はるか後ろのほうから甚だ手持ち不沙汰な顔を揃えて歩いていた。

かくて御料の猟場に着くと、許田二百余里(支那里)のあいだを、十万の勢子でかこみ、天子は、彫弓金※箭を御手に、駒を野に立てられ、玄徳をかえりみて宣うた。

「皇叔よ。今日の猟を、朕のなぐさみと思うな。朕は、皇叔が楽しんでくれれば共にうれしかろう」

玄徳は、恐懼して、

「おそれ多いことを」

と、馬上ながら、鞍の前輪に顔のつくばかり、拝伏した。

ところへ、勢子の喊声におわれて、一匹の兎が、草の波を跳び越えてきた。

帝は、眼ばやく、

「獲物ぞ。あれ射てとれ」

と、早口にいわれた。

「はっ」

と、玄徳は馬をとばして、逃げる兎と、併行しながら、弓に矢をつがえてぴゅっんと放した。

白兎は、矢を負って、草の根にころがった。帝は、その日、朝門を出御ある折から、始終、ふさぎがちであった御眉を、初めてひらいて、

「見事」

と、玄徳の手ぎわを賞し、

「彼方の丘を巡ろうか。皇叔、朕がそばを離れないでくれよ」

と堤のほうへ、先に駒をすすめて行かれた。

すると、一叢の荊棘の中から、不意にまた、一頭の鹿が躍りだした。帝は手の彫弓に金※箭をつがえて、はッしと射られたが、矢は鹿の角をかすめて外れた。