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さんごくし

三国志(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(三)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 312,452 字 · 628 頁

青空文庫

とたんに樹々の嫩葉も梢もびゅうびゅうと鳴って、一点暗黒となったかと思うまに、一柱の巻雲が、はるか彼方の山陰をかすめて立ち昇った。

「――龍だ、龍だ」

「あれよ、龍が昇天した」

そこらを馳けてゆく召使いの童子や家臣が、口々に風のなかで云っていた。――そして一瞬、掃いてゆくような白雨が、さあっと迅い雨脚でかけぬけた。

「すぐやもう」

曹操と玄徳は、樹蔭に雨やどりして、雨の過ぎるのを待っていた。

そのあいだに、曹操は、玄徳へこんなことを話しかけた。

「君は、宇宙の道理と変化を、ご存じか」

「いまだわきまえません」

「龍というものがよくそれを説明している。龍は、時には大に、時には小に、大なるは霧を吐き、雲をおこし、江をひるがえし、海を捲く。――また小なれば、頭を埋め、爪をひそめ、深淵にさざ波さえ立てぬ。その昇るや、大宇宙を飛揚し、そのひそむや、百年淵のそこにもいる。――が、性の本来は、陽物だから時しも春更けて、今ごろとなれば大いにうごく。龍起れば九天といい、人興って志気と時運を得れば、四海に縦横するという」

「実在するものでしょうか」

「ありとみればあり、なしとみればないかも知れん。