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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(一)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 頁

青空文庫

と、注意したにもかかわらず、そう気にもかけず眠っていた。

濮陽の城内は混乱した。西の寨はたちまちに陥落して曹操の兵が旗を立てた。けれどはね起きた呂布が、

「寨は我一人でも奪回して見せん。汝ら入りこんだ敵の奴ばらを、一匹も生かして帰すな」

と、指揮に当ると、彼の麾下はまたたくまに、秩序をとりかえし、鼓を鳴らして包囲して来た。

山間の嶮をこえて深く入り込んだ奇襲の兵は、もとより大軍でないし、地の理にも晦かった。一度、占領した寨は、かえって曹操らの危地になった。

乱軍のうちに、夜は白みかけている。身辺を見るとたのむ味方もあらかた散ったり討死している。曹操は死地にあることを知って、

「しまった」

にわかに寨を捨てて逃げ出した。

そして南へ馳けて行くと、南方の野も一面の敵。東へ逃げのびんとすれば、東方の森林も敵兵で充満している。

「愈いかん」

彼の馬首は、行くに迷った。ふたたびゆうべ越えて来た北方の山地へ奔るしかなかった。

「すわや、曹操があれに落ちて行くぞ」

と、呂布軍は追跡して来た。もちろん、呂布もその中にいるだろう。

逃げまわった末、曹操は、城内街の辻を踏み迷って、鞭も折れんばかり馬腹を打って来た。