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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(一)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 頁

青空文庫

「小癪なやつ。打殺せ」

五十騎ほどの敵が一かたまりになって馳けて来た。

悪来は善く戦い、敵の短剣ばかり十本も奪い取った。彼の戟はもう鋸のようになっていたので、それをなげうって、十本の短剣を身に帯びて、曹操の方を振向いた。

「――逃げ散りました。今のうちです。さあおいでなさい」

彼は、徒歩のまま、曹操の轡をとって、また馳け出した。二、三の従者もそれにつづいた。

けれど矢の雨はなお、主従を目がけて注いで来た。悪来は、の錣を傾けてその下へ首を突っ込みながら、真っ先に突き進んでいたが、またも一団の敵が近づいて来るのを見て、

「おいっ、士卒」と、後ろへどなった。

「――おれは、こうしているから、敵のやつが、十歩の前まで近づいたら声をかけろ」

と命じた。

そして、矢唸りの流れる中に立って、眠り鴨のように、顔へ錣をかざしていた。

「十歩ですっ」

と、後ろで彼の従者が教えた。

とたんに、悪来は、

「来たかっ」

と、手に握っていた短剣の一本をひゅっと投げた。

われこそと躍り寄って来た敵の一騎が、どうっと、鞍からもんどり打って転げ落ちた。

「――十歩ですっ」

また、後ろで聞えた。