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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(一)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 頁

青空文庫

「おうっ」

と、短剣が宙を切って行く。

敵の騎馬武者が見事に落ちる。

「十歩っ」

剣はすぐ飛魚の光を見せて唸ってゆく――

そうして十本の短剣が、十騎の敵を突き殺したので、敵は怖れをなしたか、土煙の中に馬の尻を見せて逃げ散った。

「笑止なやつらだ」

悪来はふたたび曹操の駒の轡をとって、逃げまどう敵の中へ突ッ込んで行った。そして敵の武器によって敵をなで斬りにしながら、ようやく一方の血路をひらいた。

山の麓まで来ると、旗下の夏侯惇が数十騎をつれて逃げのびて来たのに出会った。味方の手負いと討死は、全軍の半分以上にものぼった。――惨憺たる敗戦である。いや曹操の生命が保たれたのはむしろ奇蹟といってよかった。

「そちがいなかったら、千に一つもわが生命はなかったろう」

曹操は、悪来へ云った。――夜に入って大雨となった。越えてゆく山嶮は滝津瀬にも似ていた。

帰ってから悪来の典韋は、この日の功によって、領軍都尉に昇級された。

五

ここ呂布は連戦連勝だ。

失意の漂泊をつづけていた一介の浪人は、またたちまち濮陽城の主だった。先に曹操を思うさま痛めつけて、城兵の士気はいやが上にも昂まっていた。