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さんごくし

三国志(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(一)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 309,839 字 · 622 頁

青空文庫

――が、その刹那。

楼上の一角が、焼け落ちて来たのである。何たる惨! 火に包まれた巨大な梁が、そこから電光の如く落下してきた。そしてちょうど曹操の乗った馬の尻をうったので、馬は脚をくじいて地にたおれ、ほうり出された曹操の体のほうへ、その梁はまたぐわらっと転がって来た。

「――あっ」

曹操は、仰向けにたおれながら、手をもってその火の梁を受けた。――当然、掌も肱も、大火傷をした。自分の体じゅうから、焦げくさい煙が立ちのぼった。

「……ウウム!」

彼は手脚を突っ張ってそり返ったまま焔の下に、気を失ってしまった。

しきりと自分を呼ぶ者がある。――どれくらい時が経っていたか、とにかくかすかに意識づいた時は、彼は、何者かの馬上に引っ抱えられていた。

「悪来か。悪来か」

「そうです。もうご安心なさい。ようやく敵地も遠くなりましたから」

「わしは、助かったのか」

「満天の星が見えましょう」

「見える……」

「お生命はたしかです。お怪我も火傷の程度だから、癒るにきまっています」

「ああ……。星空がどんどん後ろへ流れてゆく」

「後から馳け続いて来るのは、味方の夏侯淵ですから、ご心配には及びませんぞ」