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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 350,912 characters · 702 screens
弟子と師とのけじめを、伊織には、厳然とつけてきたからである。――放ったらかしにただ連れていた城太郎の結果に鑑みて、伊織には意識的に、師であろうとしているためだった。
その伊織が、めずらしく、甘えてねだると、武蔵は、
「……ウム」
生返辞して、考えてはいたが、
「よし、連れて行ってつかわそう」
伊織は雀躍りして、
「天気もいいし」
と、もうおとといの晩の空への怨みも忘れ果てて、俄かに、この家の老百姓に告げて、弁当を乞い草鞋をもらい、
「さあ、参りましょう」
と、武蔵を促す。
老百姓は、お帰りの頃までに、草庵を建て直しておきます――といって送り出すし、野分の後の水たまりは、まだ所々小さい湖水を作っているが、おとといの暴れは嘘のように、鵙は低く飛び、空の碧さは、高く澄みきっている。
三峰の例祭は、三日間とある。こう決まって出て来ればもう、伊織とてそう急ぎもしない。間に合わぬ心配はないからである。
田無の宿の草旅籠に、その日は早く泊り、翌日の道も、まだ武蔵野の原だった。
入間川の水は三倍にもなっていた。平常の土橋は川の中に取残され、何の用もなさなくなっている。附近の住民達は、田舟を出したり、杭を打ち込んだりして、両岸から橋を継ぎ足していた。