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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

Read 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 350,912 characters · 702 screens

Aozora Bunko

五

と、五郎次は、主君と相手の者へ、そう会釈をして、静かに、彼方へ退がって行った。もちろん身支度のためである。

朝に笑顔で出て、夕方には死体で帰るかもしれない侍奉公の嗜みとして、きょうも、下帯から肌着まで、垢のつかない衣を着ていたということが、支度に退がる彼の心を、その時ふと、涼やかにさせていた。

五

身を開け放した姿で、小次郎は、突っ立っていた。

借りうけた三尺の木太刀を提げ、袴の襞もたらりと――絡げもせずに、試合の場所を選んで、先に待っていた。

逞しかった。誰が見ても、憎んで見てさえも、それは凛々しい男振りであった。

殊に、鷲のごとく勇猛で、しかも美しい横顔には、平常と何の異なるところも見えなかった。

(どうしたか?)

相手に立つ岡谷五郎次へは、家中の者の友情がわいた。小次郎の異彩を見るにつけ、彼の腕のほどが案じられ、彼が支度にかくれた幕の方へおのずと不安な眼がうごいた。

だが、五郎次は、落着きすまして身支度を終えていた。それになお、手間どっているわけは、槍の先に濡れ晒布を、ていねいに巻きつけているためだった。

小次郎は、見やって、

「五郎次どの。それは何のお支度だな。