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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 350,912 characters · 702 screens
鷲
一
「覚悟で来たかっ」
さらに一歩ふみ出すと、それと共に伸びた物干竿の切先一尺ほどに、軒の月が白く映した。チカッと、余五郎の眼も眩むばかり、白い光芒がそれから跳ねた。
きょう研ぎ上がって来たばかりの刀である。小次郎は、渇いた胃が饗膳へ向ったように、相手の影を獲物として、じっと見すえた。
鷲
一
ひとに仕官の斡旋を頼んでおきながら、主君とする人のことばが気に喰わないなどと、間際になって、わがままをこねる。
岩間角兵衛は、弱って、
(もう関うまい)
と、思った。そして、
(後進を愛すのはよいが、後進の間違った考えまで、甘やかしてはいかん)
と、自省した。
けれど角兵衛は元々、小次郎という人間が好きだった。凡物でないと打ち込んでいた。従って、彼と君侯のあいだに挟まって、困った当座は、腹も立ったが、数日経つと、
(いや、あれが彼の、偉いところかも知れぬ)
と、考え直して来た。
(凡の人物なら、お目見得といえば、欣んで行くだろうに)
と善意に酌んで、むしろそれくらいな気概は、若い人間にあるほうが頼母しいし、また、彼にはその資格があると、よけい小次郎が大きく見えて来た。
で、四日ほど後。