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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

Read 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 350,912 characters · 702 screens

Aozora Bunko

九

幸村は、ニコとうなずいた。

やがてまた。

やがてまた。

お互いに馬上長槍の姿を、その時ふと描いて胸につぶやき合ったであろう。だが、塀ごしの杏の花は、しとどに散って、送る主と、去る客の蓑を、惜しむ行く春の斑にしらじらと彩った。

大助は、送って行きながら、その途々、

「さしたる降りはありませぬ。晩春の空癖で、山には一日一度ずつ、きっとこんな疾風雲が通るのです」

と、いった。

だが雲脚に追われて、おのずと足も急いで来ると、やがて学文路の宿の入口あたりで、彼方から駈けて来る一駄の馬と、白衣の山伏に行きあたった。

九

荷駄の背には荒菰を蔽いかけてある。そしてがんじがらみにした男の体を鞍の上にくくしつけ、両側から柴の薪束を抱き合せてある。

山伏は、先に駈け、旅商人ていの男が二人、ひとりが手綱を持ち、ひとりは細竹を持って、馬の尻を打ちたたきながら、急ぎに急いで来たのだった。

――と。その出合いがしら。

大助のほうは、はっと眼を反らし、わざと連れの長岡佐渡へ、何か話しかけたが、その眼に気づかず、山伏のほうは、

「おうっ、大助様っ」

と、弾み声で、呼びかけた。

にも関わらず、大助はなお、聞えぬふりをしていたが、佐渡と縫殿介とは、異な顔をして、すぐ足を止め、