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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 350,912 characters · 702 screens
四賢一燈
一
「畜生」
その藺すだれもズタズタに斬り、外の野葡萄も、乱離と斬って、なお、野を見廻していた伊織は、二ツの眼の行方を、天の一角に見つけた。
それは、青い大きな星だった。
四賢一燈
一
どこかで、神楽笛の音が、遠く聞えるようでもある。夜祭でもあるのか、篝の火花が、森のこずえに、うす赤く映している。
馬でこそ、一刻だったが、口輪を把って付いて来た北条新蔵には、この牛込まで、かなりの道であったに違いない。
「ここです」
赤城坂の下。
一方は赤城神社のひろい境内であり、坂の道を隔てて、それに劣らぬ広い土塀をめぐらした宅地がある。
土豪の門のような、そこの構えを見て、武蔵は鞍を下り、
「御大儀」
と、新蔵へ手綱を返す。
門は開いていた。
彼が曳き込む駒のひづめが戛々と邸内へひびくと、待ちもうけていたらしく、紙燭を手にした侍たちが、
「お帰り」
と、出迎えて、彼の手からまた駒を受けとり、そして客の武蔵の先に立って、
「ご案内いたしまする」
と、新蔵と共に樹々の間を縫って、大玄関の前まで来る。
すでに、そこの式台には、左右に明るい燭台を備え、用人らしい者以下、安房守の召使がずらりと頭を下げていた。