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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 350,912 characters · 702 screens
槐の門
一
沢庵は、簡単にいうし、安房守もまた、
「とにかく、悪いようにはいたさぬ。われわれに任しておかれい」
と、のみ込んでしまう。
更けてくる――
酒は尽きないが、燭は時々、灯の暈をかぶった。そのたびに、北条新蔵は、灯を剪りに来て、ここの話を耳に挟み、
「まことに、よいお話で。皆様の御推挙が通り、それが実現すれば、柳営武道のためにも、武蔵どののためにも、もう一夕、宴を張って、お杯を挙げてもよろしゅうございますな」
と、父へもいい、客たちへもいった。
槐の門
一
――今朝、起きてみると、姿が見えないのである。
「朱実」
又八は、台所から首を出して、呼んでみた。
「……いねえぞ?」
小首を傾げる。
前から、予感がないでもなかったので、押入を開けてみると、ここへ来てから作った、彼女の新しい衣裳もない。
又八は、顔いろを変え、すぐ土間の草履を穿いて、外へ出た。
隣家の、井戸掘り親方の運平のうちも覗いてみたが、見えなかった。
又八は、いよいよあわて気味に、
「うちの朱実を知りませんかね……」
長屋から、往来の角まで、訊き歩いて出て行った。
「見たよ、今朝」
と、いう者がある。
「ア。