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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

Read 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 350,912 characters · 702 screens

Aozora Bunko

虫しぐれ

一

「その後も、心がけておるか」

忠利のいい方が、佐渡には、唐突に聞えたとみえて、ただ眼をみはっていると、

「武蔵のことじゃよ」

と、忠利がつけ加えた。

「――はっ」

と、佐渡が頭を下げると、

「とにかく、見つけたら、いちど屋敷へ召連れい。人間が見たい」

――同じ日。

いつもの弓場へ、忠利が、午すこし過ぎ、姿をあらわすと、的場の控え所に、彼のすがたを待っていた岩間角兵衛が、それとなく、小次郎の推挙をまた、繰返した。

忠利は、弓を把りながら、うなずいて、

「忘れておった。――ウム、いつでもよい、いちどその佐々木小次郎とやらを、この弓場まで召連れて来い。――抱えるか、抱えぬかは、見たうえのことじゃが」

と、いった。

虫しぐれ

一

ここは伊皿子坂の中腹、岩間角兵衛が私宅の赤門の中。

小次郎の住居は、その地内で、独立した手狭な一棟であった。

「おいでか」

と、訪なう者があった。

小次郎は、奥に坐って、静かに、剣を看ていた。

愛剣の物干竿――

これはここの主の角兵衛に依頼して、細川家に出入りの厨子野耕介へ研にやっておいたものである。

ところが、あの事件。

その後、耕介の家とは、いよいよ経緯がまずくなったので、岩間角兵衛から催促してもらうと、今朝、耕介から送り届けて来たのである。