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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 350,912 characters · 702 screens
五
泥棒に生命乞いなどしたら、先生の名をよごすじゃないか。あかといえ。ばか」
五
城太郎はびっくりした。その大木から大地へ抛り出されたさっきよりも驚いた。余り意外だったので、自分の耳を疑ったくらいだった。
「な、なんだって。もう一ぺんいってみろ、もう一ぺん」
そう訊き直す彼の言葉が、度を外してふるえていたので、伊織は、自分の名乗に誇りすら持って、
「よく聞け、宮本武蔵の一の弟子三沢伊織といったのだ。おどろいたか」
「おどろいた」
城太郎は、神妙に兜をぬいだ。そして、なかば疑いと親しみとを持って、
「おいっ、お師匠さまは、ご丈夫か。そして今は、どこにいらっしゃるのだ」
「なんだと」
こんどは伊織が気味わるがって、じりじりと寄って来る彼を、避けながら、
「――お師匠さまだと。武蔵さまは、泥棒の弟子など持っていやしないぞ」
「泥棒とは人聞きが悪い。この城太郎は、そんな悪心は持っていない」
「エ。城太郎」
「ほんとに、おまえが武蔵様の弟子なら、何かの折、噂に出たこともあるだろう。おれがまだ、おまえみたいに小さい頃、何年もおれは武蔵さまの側に侍いていたのだ」
「嘘っ、嘘をいえ」
「いや、ほんとだ」