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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 350,912 characters · 702 screens
下り荷駄
一
自訴した者に、無法だと思う。神妙な仕方を、暴で酬われた気がした。
「歩けッ」
すでに、囚人の扱いである。武蔵は怒ったが、間に合わなかった。役人たちの身支度からして物々しかったが、行くほどに途々屯していた捕手の夥しさに驚いた。
門前町まで来るうちに、百人以上にもなって、縄付きの武蔵ひとりを十重二十重に警固して行くのだった。
下り荷駄
一
「泣くな、泣くな」
権之助は、その泣き声を、抑えつけるように、伊織の顔を、懐中へ抱きしめた。
「泣かいでもいい。――男じゃないか、男のくせに」
なだめ賺すと、
「男だから……男だから、泣くんだい。……先生が捕まって行った。――先生が縛られて行った」
と、権之助の懐中を抜け、なお大きな口をあいて、空へ向って泣いた。
「捕まったのじゃない。武蔵どのから、自訴なされたのだ」
と、いってみたが、権之助も心のうちでは不安だった。
谷川橋まで出向いていた役人の群れが、なにしろ、物々しく殺気立っていたし、その他、十名、二十名ずつの捕手が、幾組屯していたろうか。
(神妙に、自訴して出た者を、あんなにしないでも)
と、思うしまた、疑われもする。
「さ、行こう」