Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 350,912 characters · 702 screens
三
「ど、どこへさ」
「どこへでもよい」
「帰るんだ、おらあ、帰るっ」
「誰が――」
と、ばばの杖は咄嗟、風を呼んでいきなり伊織の脛を蹴った。
伊織は思わず、
「痛いっ」
と、いって坐った。
ばばの眼くばせのもとに、仲間たちは、ふたたび伊織の襟がみを持って、部落の入口の粉挽小屋の横へ連れこんだ。
そこにいたのは、正しくどこかの藩士に違いない。野袴を穿いて、見事な大小をさし、乗換馬を傍らの木につないで、今、弁当を食べ終えたらしく、小者の汲んで来た白湯を木陰で飲んでいた。
三
捕まって来た伊織を見ると、その侍はにやりと笑った。気味のわるい人である。伊織は竦んで眼をみはった。――佐々木小次郎であったからである。
その小次郎へ、おばばは、得意そうに、
「見なされ、やはり伊織めであったがな。武蔵奴が、なんぞ肚に一物あって、わしらが後を尾けさせたに違いはない」
と、顎つき出して告げた。
「……ウむ」
小次郎も、そう考えているように、頷き合った。そして、周りにいる仲間たちを、ようやく退けた。
「逃げるといかぬ。逃げぬように、小次郎どの、縛っておきなされ」
小次郎はまた、薄笑いをうかべて、顔を横に振った。