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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 350,912 characters · 702 screens
四
「おじさん」
と、後から尾いて来て、彼の腰へお辞儀をした。
月ヶ瀬からずっと奥の服部郷荒木村という僻地から、常に炭だの猪の肉だのを――城内へ大人と一緒に担いでくる――丑之助という十三、四歳の山家の子だった。
「おう、丑之助か。また道場を覗きおったな。きょうは自然薯の土産はないか」
四
彼の持って来る山芋は、この附近の山芋よりうまかった。で、助九郎が戯れ半分に訊くと、
「きょうは芋は持って来なかったけど、これをお通さんに持って来た」
と、丑之助は、手に提げていた藁苞を上げて見せた。
「蕗の薹か」
「そんなもんじゃねえよ。生き物だ」
「生き物」
「おらが、月ヶ瀬を通るたんびに美い声して啼く鶯がいるんで、眼をつけといて捕まえたんさ。お通さんにやろうと思って――」
「そうだ。そちはいつも、荒木村からこれへ来るには、月ヶ瀬を越えて参るわけだな」
「ああ、月ヶ瀬よか他に道はねえもの」
「では訊くが……。あの辺に近ごろ、侍が沢山入り込んでおるか」
「そんなでもねえが、いるこたあいるよ」
「何をしているか」
「小屋あ建って、住んで、寝てるよ」
「柵のような物を築いておりはせぬか」
「そんな事あねえな」