Japanese reading practice

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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

Read 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 350,912 characters · 702 screens

Aozora Bunko

三

だが、十歩ほど手前で先ず立ち止まって、抗議の文句をまず考えていると、折ふし、湯を貰いに起った丑之助が、出合いがしらに、胸を寄せて、

「なんだい」

と、彼に答えた。

三

伊織は、明けて十四。丑之助は取って十三だった。しかし丑之助の方が、ずっと年かさに見えた。

「何だいとは、何だい」

伊織は丑之助の不作法を咎めた。丑之助は、土地の者らしくないこの小さい旅人を鼻先で迎えて、

「そういったのが悪いか。汝から呼んだから、何だと訊いたんだ」

「ひとの物を、黙って持って行けば、盗人だぞ」

「盗人。――こいつめ、おらを盗人だといったな」

「そうさ。おらの連れの人が、あそこへ置いた莚を黙って持って行ったじゃないか」

「あの莚か。あの莚は、そこに落ちていたから持って来たんだ。なんだ莚の一枚ぐらい――」

「一枚の莚でも、旅人の身にとれば、雨をしのいだり、夜の衾になる大事な物だ。返せ」

「返してもいいが、いい方が癪に触るから返さねえ。盗人といった言葉を謝れば返してくれてやろ」

「自分の物を取返すのに、謝るばかがあるものか。返さなければ腕にかけても取るぞ」

「取ってみろ。荒木村の丑之助だぞ。汝ッちに、負けて堪るか」