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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 350,912 characters · 702 screens
三
伊織は、その姿を、穴のあくほど見つめていた。
「……佐渡様の思し召、ありがたいことに存じますが」
武蔵は、読みおえた手紙を巻きながら、ちらと、伊織の顔を見た。伊織はあわてて俯向いた。眼から涙があふれかけたので――。
三
武蔵は、返事をしたためて、
「委細、書中にいたしましたれば、佐渡様へは、よろしゅうお伝えを」
とのことだった。
そして、船島へは、自身、頃を計って出向くゆえ、お気遣いなく――ともいった。
やむなく、二人は、返書を持ってすぐ辞した。――帰るまで、伊織は遂に何もいえないでいた。武蔵も一言もことばをかけてやらないのである。しかし、無言の中に、師弟の情と、言葉以上のものは尽きていた。
二人の戻りを、待ちかねていた長岡佐渡は、武蔵の返書を手にして、まずほっと眉をひらいた。
文面には、
私事、お許様御舟にて、船島へ遣さる可旨、仰せ被聞、重畳お心づかいの段、辱なくぞんじ奉候
然れどこの度、私と小次郎とは敵対の者にて御座候。しかるに小次郎は君公の御舟にて遣され、私は其許様お舟にて遣され候旨に御座候処、右、御主君に被対、如何わしく存じ奉候。この儀、私にはお構いなされず候て然る可とぞんじ奉り候