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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 350,912 characters · 702 screens
五
――そこなれば、御家老のお邸とは事ちがい、世間の眼もなし、うわさの的になる筈もござらぬが」
なお、つけ加えて。
最前はまた、もし貴方が、すでに長岡家へ見えられていたら、自分らのその会合は先へ延ばすつもりで、念のため同家へ寄って訊ねてみたのであるが、いずれにしても長岡家へお泊りを避けるお心なら、曲げて今夜は、こっちの会合へ臨んでもらいたい――というのであった。
五
武蔵も、今は断りかねて、
「それほどまでの仰せなら」
と、承諾すると、人々は非常によろこんで、
「では早速にも」
と、即座に何かと打合せ、武蔵のそばには、木南加賀四郎ひとりを残し、後の者は、
「然らば、いずれまた後刻、寄合の席にてかかる」
と、その場からめいめい、一度家路へと帰って行った。
武蔵と加賀四郎とは、そこらの茶店先で日の暮るるを待合せ、やがて宵の星空の下を、加賀四郎の案内で、街から小半里ほどある到津の橋の袂まで導かれて行った。
ここは城下端れの街道筋で、藩士の邸宅などもなければ、酒亭なども見あたらない。橋袂には、街道の旅人や馬方相手の、見るからにひなびた居酒屋や木賃の灯が、軒端も草に埋もれて見えるだけだった。