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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 350,912 characters · 702 screens
六
「つまらぬ所へでしゃばると、命がないぞ」
「おぬしらは、お杉ばばの一族の者であろう。おばばの吩咐だ。お通さんをわしの手に渡せ」
「何。おばばの吩咐だと」
「おお」
「嘘をいえ」
郷士たちは、嘲笑った。
六
「嘘ではない。これを見よ」
城太郎は、立ち塞がったまま、紙に書いてある、ばばの手蹟をつきつけた。
不首尾、今更せんもなし
お通の身、ひとまず
じょう太郎の手にかえし
わが身を連れに引っ返さ
るべく候。
「? ……。何だこれは」
読み合って、眉をひそめた郷士たちは、城太郎の姿を、足もとから見上げ、その間に、濡れた足を水から揚げて、河原の岸にかたまった。
「見たら分るであろう。文字が読めぬのか」
「だまれ。この中にある、城太郎とは、汝とみえるな」
「そうだ。拙者は、青木城太郎」
というと――
「あっ……城太さん!」
とつぜん、お通が、絶叫して、前へのめりかけた。
先刻から、彼女の眼は、彼の姿を凝視していた。半ばは疑い、半ばは愕きに打たれ、身もがきをしていたが、城太郎自身が、城太郎と名乗ったので、はっと、われを忘れた絶叫が出たのであった。
「ア。猿ぐつわが弛んだぞ。締め直しておけ」