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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 350,912 characters · 702 screens
――しかし、梅軒の分銅鎖は、彼が、急角度に身を捻じかわしたため、彼自身の体に、ぶんと一巻き絡みついた。
「ちっ」
悲壮なさけびが、梅軒の口から洩れたか否かの咄嗟に、武蔵は、
「おうっ」
と、鉄球のように、梅軒の体に向って、自分の五体をぶつけていた。
梅軒の手は、刀のつかをつかみかけたが、武蔵の手が、その小手を撲った。彼が離した刀のつかはもう武蔵の手に握られていた。
(――惜しいっ)
心のうちにそう念じながら、武蔵は、梅軒の大刀をもって、梅軒を真二つに斬り下げていた。鍔から七、八分どころから引き気味に深く割りつけたので、生木を裂く雷のように、刀の刃は脳から肋骨の何枚かまで徹って行った。
「……ああ」
誰か後ろで、武蔵のその呼吸を、うけ継ぐように嘆声でいった者がある。
「からたけ割り。――初めて見ました」
「……?」
武蔵は、振り顧った。
四尺ほどな丸棒の杖をついて、一人の若い田舎者が立っている。むっくり肥えた肩を張り、丸々とした顔に、上気した汗をたたえ、白い歯を見せながら笑っているのである。
「やっ……?」
「わたくしです。――しばらくでござりました」
「木曾の、夢想権之助どのではないか」