Japanese reading practice

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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

Read 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 350,912 characters · 702 screens

Aozora Bunko

「そうだ、足もとの暮れぬうちに」

「縁起でもない。足もとはまだ十分に明るうございます」

「はははは、貴さまは血気に似あわず、よく御幣をかつぐの」

「そこはまだ、この道に日が浅いので、十分、舞台度胸がついていないせいでしょう。風の音にも、何となく、そわそわされてなりません」

「自分の行為を、ただの盗賊と同じように考えるからだ。天下のためと思えば、怯む気などは起らぬものじゃ」

「いつもいわれるお言葉なので、そう思ってみますものの、やはり盗みは盗みに相違ございません。どこやら後ろめたいものに襲われまする」

「何の、意気地のない」

年老った方の一文字笠は、多少自分の心にも、そうした怯えがあるらしく、忌々しげに、自分へいうとも連れの者へいうともなくつぶやいて、漆桶のくくり付けてある荷鞍へ乗り移った。

頬かぶりの前髪も、身がるく鞍へとび乗った。そして、先に出ようとする馬の前を追い越し、

「露はらいは、先に出ましょう。何か見えたら、すぐ合図いたしますから、ご油断なく」

と、後の荷駄を警めた。

道は、武蔵野の方へ向って、南へと、降るばかりで、馬の頭も、笠も頬かぶりも、夕陽の陰へ、沈んで行った。