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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 350,912 characters · 702 screens
「じゃあ、逃がしちまえ」
丑之助は、晴々といって、藁苞の腹を破った。その中から一羽の鶯が跳ね出した。そして征矢みたいに、城の外へ飛んで行った。
「ごらん。――あんなに欣んで行ったでしょ」
「鶯のことを、春告鳥ともいうんだってね」
「おや。誰に教えてもらいました?」
「そんなことぐらい、おらだって知ってらい」
「オヤ。ごめん」
「だからきっと、お通さんとこへ、何かいい便りがあるよ」
「まあ! わたしにも春を告げて来るような、よい便りがあるというの。……ほんとに心待ちに待っていることがあるのだけれど」
お通が歩み出していたので、丑之助も歩いた。けれどそこらは本丸の奥の藪だたみなので、
「お通さん、何処へ、何しに行くつもりだったんだい? もうここはお城の山だぜ」
「余りお部屋にばかりおりますから、気を晴らしに、そこらの梅花を見に出たのです」
「そんなら、月ヶ瀬へ行けばいいじゃないか。――お城の梅花なんか、つまらないや」
「遠いでしょ」
「すぐさ。一里だもの」
「行ってみたい気もするけれど……」
「行こう。――おらが薪を積んで来た牛が、この下に繋いであるから」
「牛の背へ」
「うん。おらが曳いて行くで」