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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 350,912 characters · 702 screens
麻の胚子
一
……ただ日頃、もしやと思っていたので」
「疾くお聞き及びと存じまするが、仔細あって、師の治郎右衛門は道場を捨てて山へ隠れました。その原因は、この寅之助の不つつかにあったことゆえ、自分も身を落し、薪を割り水を担うても、宝蔵院でひと修行せんものと、身許をかくして住み込んだわけ。――お恥かしゅう存じます」
「佐々木小次郎とやらのために、小野先生が敗れたということは、その小次郎が吹聴しつつ、豊前へ下って参ったので、隠れもない天下の噂となっておるが、さては……師家の汚名を雪がんための御決心とみえる」
「いずれ。……いずれまた」
心から赤面に堪えぬように、草履取の寅蔵は、そういうと、遽に別れて、立ち去ってしまった。
麻の胚子
一
「まだ帰らぬか」
柳生兵庫は、表の中門まで出て、お通の身を案じていた。
お通が、丑之助の牛に乗って何処かへ行ったまま、だいぶ時間が経ってからの騒ぎなのである――。
そのお通が、城内に見えないと気がついたきっかけも、江戸表から一通の飛脚状が兵庫の手に届いて、兵庫がそれをお通に見せようと姿を探し出したことからであった。
「月ヶ瀬の方へは、誰と誰が見に行ったか」