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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

Read 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 350,912 characters · 702 screens

Aozora Bunko

二

――そして何日かは、お通を無事に、彼の手に渡してやることが、祖父の遺志でもあったろうし、自分の武士――武士の仄かな恋の遣り場とも――独り考えていたところである。

ところで。

きょう彼の手に届いた飛脚状は、江戸表の沢庵から出た手紙で、日付は去年の十月末に出ているが、どうして遅れたのか、年を越えて、今日のたった今、彼の手に届いたばかりなのだった。

それを見ると、

武蔵事、叔父御の但馬どの、矢来の北条どのなどの推挙により、愈※(二の字点、1-2-22)、将軍家御師範座の一人に御登用と相極まり候て……云々。

の辞句が見える。

それのみか、武蔵も就任すれば、さっそく屋敷を持ち、身の周りの者もなくてはかなわぬ――。お通一名だけでも、先へ早々と、江戸表へ下向あるよう、諸事また次便に――というようなことが、書きつらねてあるのだった。

(どんなに欣ぶか!)

と、兵庫が、わが事のように、その手紙を持って彼女の部屋へ訪れたところが、お通の姿が、何処にも見えなかったという次第なのであった。

二

そのお通は、ほどなく助九郎に伴われて、帰って来た。

また、月ヶ瀬の方へ行った侍たちは、丑之助と出会い、これも丑之助を連れて、やがて戻って来た。