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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 350,912 characters · 702 screens
「アア。あるある。そういわれれば、おらにも、教えてくれたものがあったっけ」
「誰だ」
「人間じゃないんだ」
「人でなければ、天狗か」
「麻の実だよ」
「何」
「麻の実さ。あの鳥の餌にもやるだろ。あの麻の胚子さ」
「ふしぎなことを申す奴。麻の実がどうしてそちの師か」
「おらの村にゃいねえが、少し奥へ行くと、伊賀衆だの、甲賀衆だのっていう、忍者のやしきが幾らもあるで――その伊賀衆たちが、修行するのを見て、おらも真似して、修行したんだ」
「ふウむ? ……麻の胚子でか」
「あ、春先、麻の胚子を蒔くんだよ。すると、土から青い芽がそろって出て来るがな」
「それをどうするのか」
「跳ぶのさ――毎日毎日、麻の芽を跳ぶのが修行だよ。あたたかくなって、伸び出すと、麻ほど伸びの早いものはないだろ。それを朝に跳び、晩に跳びしてると――麻も一尺、二尺、三尺、四尺とぐんぐん伸びて行くから、怠けていたら、人間の勉強の方が負けて、しまいには跳び越えられないほど高くなってしまう……」
「ほ! 貴様は、それをやったのか」
「アア。おらあ、春から秋まで、去年もやったし、おととしも……」
「道理で」
兵庫が、膝を打って感じ入っていた時である。