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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 350,912 characters · 702 screens
「いや、多分、南光坊は試合うまいよ。試合えば、彼も至らぬ奴じゃ」
「はて? ……左様でございましょうか」
助九郎には、解せない面持である。
南光坊の人物は、よく知っている兵庫の言ではあるが、なぜ、今出てきた山伏と試合えば、至らぬ人間だろうか。
不審に思っていたが、ほどなく助九郎にも意味が分った。
その時、彼方では――
山伏の男が、借り受けた木剣を手にひっ提げ、南光坊の前へ進んで行って、
(いざ)
と、挑んでいた。その体を見て、助九郎にも、初めて分ったのである。
大峰の者か、聖護院派か、見知らぬ山伏だが、年ごろ四十前後の男で、鉄のような五体は、修験の行に鍛えたというよりは、戦場で作ったものである。生死の達観のうえに出来上っている肉体なのである。
「お願いいたしましょうか」
山伏の言語は穏やかである。眼も柔和であった。だが、この男は生死の境から外の物だった。
「他者か」
と、南光坊は、新手の敵を見直して、そういった。
「は。飛入りではござるが」
と、会釈すると
「待たっしゃれ」
南光坊は、槍を立ててしまった。これはいけないと悟ったらしいのだ。技では勝てるかも知れないが、絶対に、勝てないものを、この新手に感じたのである。