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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 350,912 characters · 702 screens
大楠公の奉じた武士の道――抱いたであろう理想とは、まだまだ遠い世の中なのだ)
と、夜具の中に、横たえている身も熱くなり、河内の峰々や、金剛寺の草木が、夜半を吠えたけぶも、何やら、心あるもののように夢へ聞えてくるのだった。
――伊織は伊織でまた、
(何だろ、さっきの山伏は?)
と、あの白い幻像が、瞼から消えないらしい。
そして、明日の旅が、何だかしきりと気づかわれ、
(恐いなあ)
と、つぶやいて、峰のあらしに蒲団の襟をひきかぶった。
そのため、夢に大日様のお微笑も見ず、尋ねる姉の面影もあらわれず――朝もぱちりとはやく眼がさめてしまった。
おあんさんと、藤六は、二人が今朝早く立つとのことに、暗いうちから朝めしや弁当の支度などしておいてくれて、いよいよ此家の門から立つとなると、
「喰べながらお歩き」
と、伊織へ、酒の糟の焼いたのを、紙につつんでべつにくれた。
「お世話になりました。御縁もあらばまた――」
立ち出でると、峰には虹いろの朝雲がうごきかけ、天野川の流れからは、湯気のような水蒸気が立っていた。
その朝靄をついて、ぴょいと、そこらの家から飛び出して来たひとりの身軽な旅商人は、権之助と伊織のうしろから、