Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 350,912 characters · 702 screens
七
伊織は、喚けど声も出ない猿ぐつわを、涙でぬらしながら、
――今行ったのは、姉さんのお通さまに違いない!
――会えたのに。会えもしない。おらがここにいるのも、知らずに行ってしまった。
――何処へ。どっちへ?
と、思いみだれ、胸の中で、泣き躁いでいたが、誰ひとり顧みる者もない。
店頭は、荷揚げの船がついて、いよいよ混雑して来るし、午さがりの往来は、暑いのと埃で、人の足も早かった。
「おいおい。佐兵衛どん。何だってこの丁稚を、熊の子の見世物みたいに、こんな所へ縛っておくのだ。無慈悲な人づかいするようで、見ッともないじゃないか」
主人の小林太郎左衛門は堺の店にはいなかったが、その従兄弟とかいう南蛮屋の某――黒あばたがあって怖らしい顔をしているが、いつも遊びに来ると、伊織に、菓子などくれる気のいい人物があって――その南蛮屋が、怒っていった。
「こんな往来先へ、こんな小さい者を、いくら懲らしめにせよ、小林の外聞にもさわる。はやく解いてやんなさい」
帳場の佐兵衛は、伊織が、箸にも、棒にもかからないことを、
「はい。はい」
と、服従しながらも、一方でくどくど告げ口していたが、南蛮屋は、