Japanese reading practice

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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

Read 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 350,912 characters · 702 screens

Aozora Bunko

と、注意した者のほうへ――思わず眼をやって――そして一瞬、伊織へかぶせる熱湯を、ためらっていたのだった。

「えらいことが始まったのう」

御老台と呼ばれた人物は――道の向う側から足をうつして来ていた。若党の縫殿介ひとり召連れて、茶地の麻の小袖に、夏も冬も同じ物かと思えるような野袴をはき、汗だけは、人いちばい汗性らしい顔をした藩老の長岡佐渡であった。

「これは、とんだ所を、お目にかけてしもうた。はははは、懲らしめております」

大人げないと思われはしまいか。――巌流は藩の先輩にそう自分ですぐ斟酌したものか、紛らすように笑っていった。

佐渡は、伊織の顔ばかりじっと見て、

「ふむ。懲らしめにな。……理由のあることなら、仕置もよかろう。サササ。やりなさい。佐渡も見物しよう」

熱湯の柄杓を持ち怺えたまま、佐兵衛は、巌流の顔を横目に見た。巌流は、相手が少年であるばかりに、自分の立場が、不利に見えていることを直ぐ覚って、

「もうよい。これで童も懲りたであろう。――佐兵衛、湯柄杓を退け」

すると、伊織は、さっきから開くともなく開けたまま、空虚に見つめていた人の顔へ向って、