Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

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みやもとむさし

宮本武蔵(七)

吉川 英治

Read 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 350,912 characters · 702 screens

Aozora Bunko

「又八さん、加減を見てよ」

「すこし、熱いな」

車井戸の音がきりきりする。又八は裸で駈けてゆき、手桶の水を取って来て、自分でうめて、すぐ入浴りこむ。

「ああいい湯だ」

親方はもう浴衣になって、糸瓜棚の下に竹床几を持ち出し、

「きょうは、西瓜は売れたかい」

と、訊く。

「知れたもんですよ」

又八は、指の股に、血が乾いていたのを見出して、気味わるそうに、手拭で落していた。

「そうだろうな、西瓜なんぞ売るよりはまだ、井戸掘り人足になって日傭稼ぎしたほうが、楽だと思うが」

「いつも、親方が、おすすめしてくれますが、井戸掘りになると、お城のなかへはいるんですから、滅多に、家へ帰れないでしょう」

「そうさ。御作事方のお許しが出なくっちゃ、帰るわけにゆかねえな」

「それじゃあ、朱実がいうには、淋しいから、やめてくれといいますんでね」

「おい、のろけかい」

「決して、あたし達は、そんな仲じゃございません」

「そうめんでも奢りなよ」

「――ア痛っ」

「どうしたい」

「頭の上から、青い柿が落ちて来やがったんで」

「ははは。のろけるからよ」

親方は渋団扇で、膝をたたいて笑った。伊豆の伊東の生れで、運平さんという名で界隈の尊敬をうけていた。