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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 350,912 characters · 702 screens
――何か、見届けるような、確乎とした眼ざしで。
だが、その顔は、銀杏型の藁編笠でかくしているので、その面に、どんな感情をひそめているかまでは、傍から窺うよしもない。
ただ。
不審なのは、万兵衛を見送ってから、今度はまた、頻りと垣の内をのぞいていたことだった。
「…………」
ごとん、ごとん――杵の音がもうしていた。お通は、何も知らぬ様子で、万兵衛が帰ってゆくとふたたび杵を持って、臼の中の紺染の布を搗いていた。
よその染屋の庭から、同じような杵の音と、染屋娘の唄が、のどかに流れていた。
お通の杵にも、先刻よりは、力があった。
わが恋は
あひそめてこそ
まさりけれ
飾磨の布の
色ならねども
唄わないお通は、詞花集か何かにあった、そんな歌など胸につぶやいていた。
便りもそこへ来ているとあるから、お吟様に会えば、恋う人の消息もきっと知れよう。
女は女同士。お吟様へなら自分の気もちを語ることもできる。――武蔵様の実の姉、きっと、妹とも思って、聞いて下さるにもちがいない。
搗く杵はうつつ――
しかし、久しぶり心は明るく、堀川百首のうちの、
播磨なだ
うらみてのみぞ
すぎしかど