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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 350,912 characters · 702 screens
でも、太郎左衛門船の影は、遠浅の沖に泊って、見えているので、何かの都合で、遅れたのであろうかと、噂しながら、一同なお浜辺に立ち並んでいたが、やがて沖へ迎えに行ったお船手の軽舸の者が、漕ぎ戻って来る様子。
やれ、見えた――
と思ったのも束の間、見れば軽舸の上には、武蔵の姿も見えぬ。どうした理か、と訊ねると、
(こんどの船都合は、この飾磨に上がる旅客もなし、少しの積荷は、沖待ちの船頭から受取ったので、船はすぐここから室の津へ廻し、先を急ぐので)
という便船の者の言葉だとある。
そこで、軽舸の者はまた、
(この便船には、宮本武蔵と申さるるお人が乗り合せておるはず。姫路藩の家中の者でござるが、一夜はお泊りと存じ、他の者も大勢、浜までお迎えに参っております。わずかな間でも、ちょっとこの軽舸でお上がりくださるまいか)
そう申し入れたところ、船頭の取次を聞いて、やがて武蔵の姿が艫の舷にあらわれ、下の軽舸へ向っていうには、
(せっかくの御好意なれど、このたびは、御承知のとおり大事の一儀にて、小倉におもむく途中のかたがた、便船もこよいのうち室の津へまわる由。あしからず御一同へお伝えを)