Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 350,912 characters · 702 screens
それは、病をも、あらゆる困難をも、また、長い年月をも、衝き貫いて来た強い一筋の意志だった。
弱い――肉体も、情にも、姿も見るからに弱々しい、彼女のどこに、そんな強固なものが潜んでいるのかと怪しまれる程、それは今、屹と胸を衝いて彼女の頬にほの紅く血を上せて来たのだった。
「ばば様。――城太さん」
ふいに、彼女は舟から呼んだ。
二人は、岸のすぐ上へ、近づいて来て、
「お通どの」
何と話そう。思い惑って、くもり声で城太郎が答えた。
「聞きました。船のご都合で、武蔵様がお見えにならないことは、今、お二人のおはなしで……」
「聞かれたか」
「はい。嘆いても及びませぬ。また、いたずらに悲しんでいる時でもございません。この上は、いっそのこと、小倉表まで参りとう存じます。そして、試合のご様子を見届けたいと思います。――もしものことが全くないとは、どうしていい切れましょう。その時にはお骨を拾うて戻る覚悟でございまする」
「――でも、その病体では」
「病……」
お通はその時まったく、自分が病人であることは忘れていた。しかし城太郎にそう注意されても彼女の意志は肉体を超えて、はるかに高い健康な信念の中に呼吸していた。