Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 350,912 characters · 702 screens
四
さあござれ。無二斎の伜どの」
手をひかんばかりだし、父の友人という格から、有無をいわさぬ口吻で、もう先へ歩き出した。
四
拒みかねて、つい武蔵も、ともども歩き出したが、
「いや。やはりお断りいたしましょう。ご好意を無にいたすようでござるが」
立ち淀んで、辞退すると、人々は口を揃えて、
「なぜじゃ。折角、われら同郷の者が、御身を迎えて、大事の門口を、祝おうというのに」
「佐渡様の思し召もそうじゃ。佐渡様にも悪しかろうに」
「それとも、何ぞご不服か」
すこし感情を害したらしく、わけて無二斎とは生前莫逆の友だったという内海孫兵衛丞などは、
「そんな法やある」
といわんばかりな眼である。
「決して左様な心底ではございませぬが」
慇懃に詫びたが、慇懃だけでは済まさず、理由はと、たたみかけられて、武蔵は是非なく、
「――巷のうわさ、取るに足らぬことですが、この度の試合をもって、細川家の二家老、長岡佐渡様と岩間角兵衛様とを対立して見、そうふたつの勢力に拠って、一藩の御家中も対峙しておる。そして一方は巌流を擁して、いよいよ君寵のお覚えを恃み、長岡様にもまた彼を排し、御自身の派閥を重からしめんとしておるなどと、あらぬことを、道中などにても聞き及びました」