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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Read 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 350,912 characters · 702 screens
「ほ、では、近頃のお下向でござりましたか」
「右大臣家(秀忠)とは、大徳寺でも、二度ほど会うているし、大御所には、しばしば謁しておるが、つい江戸には、こん度が初めて。――して、お許には」
「私もつい、この夏の初め頃から――」
「だが、だいぶもう、関東でも、おぬしの名は、有名なものじゃの」
武蔵はぞっと、背すじに恥を覚えながら、
「悪名ばかり……」
と、俯向いた。
沢庵は、その体をしげしげ眺め入って、彼の「たけぞう」時代の姿を思い出しているらしかった。
「いや何、おぬしぐらいな年頃に、早くも、美名の高いのは、むしろどうかな? ……。悪名でも関うまい。不忠、不義、逆徒――そんな悪名でない限りは」
と沢庵はいって、
「さて、次には、そちらの修行――また、今の境遇など、訊きたいが」
と、問い出した。
武蔵は、この数年のあらましを語って、
「今もって、未熟、不覚、いつまで、真の悟入ができたとも思われませぬ。――歩めば歩むほど、道は遠く深く、何やら、果てなき山を歩いている心地でございまする」
と、述懐した。
「む。そうなくては」
と、むしろ沢庵は、彼の嘆息を正直な声として、欣びながら、